Fireworks
Fireworksとは、ウェブサイトやモバイルアプリケーションなどのデジタルプロダクトの画面設計やプロトタイピングを行なうためのビットマップとベクターのハイブリッド型グラフィックスエディタである。正式名称はAdobe Fireworksで、Adobeが買収する前はMacromedia Fireworksという名称だった。
Fireworksの最たる特徴として、ラスター形式のデータとベクター形式の画像を同時に扱うことができる点が上げられる。従来のデザインツールではラスター形式のデータ編集はPhotoShop、ベクター形式のデータ編集はIllustrator..など別々にツールを使い、組み合わせる必要があったが、Fireworksではその両方のデータを直接扱えることが革新的だった。
代表的な機能
デザインデータ形式
Fireworksでは、イラストレーションなどの画像や画面デザインなどのUIを、Fireworksの独自形式である.fw.png
形式で保存できる。ユニークな点としてFireworksで作成したPNGデータはそのまま画像ファイルとして使うことも可能で、編集性を保ったままWebページに埋め込むこともできる。
共通要素のシンボル化
Fireworksでは、「シンボル」と呼ばれる再利用可能な要素を設定し、それを複数のページや同一ページに配置できる。マスターデータシンボルが編集されると、そのシンボルのすべてのインスタンスに変更が反映される。Figmaでいうところのコンポーネントに近い機能である。
プロトタイピング
当時単独でプロトタイピング機能を提供しているツールはほとんどなかったが、Fireworksは「インタラクティブPDF」というフォーマットを使って簡易なプロトタイプとして出力できる機能を提供していた。これはFireworks上でホットスポット機能よるクリッカブルなエリア作成と、移動先となるページを指定できることで実現していた。
バグの多さ
Fireworksで忘れられないのは、バグの多さである。特にFireworks CS4の頃は、バグが多すぎて使い物にならないという声が多かった。Adobeが買収した後もバグの修正は進んでいたが、最後までその印象を払拭できなかった。
それでもFireworksは、デザインツールとしてのコンセプトが優れていたため、多くのデザイナーに愛された。
Fireworksの終わり
Adobeは2013年にFireworksの開発とアップデートを停止した。その理由については、Adobeが他のソフトウェア(例えばPhotoshop、Illustrator)にリソースを集中することを決定したからと考えられる。
当時この発表に多くのFireworksユーザーが失望した。AdobeはPhotoshopやIllustratorをFireworksの代替としてしばらく推奨していたが、そもそものコンセプトとしてスクリーンデバイス向けに設計されていないため、これらツールは完全な代替にはなり得なかった。
完全な後継ツールとしてはAdobe XD、SketchやFigmaなどの登場を待つことになった。これらのツールはFireworksのコンセプトを引き継ぎ、さらに進化させたものと言える。
Fireworksは今もこれらのツールに魂として受け継がれている。